



● ナツメグ ナツメグの品種の特徴
「ナツメグ」はインドネシア・モルッカ諸島を原産とするニクズク科ニクズク属の常緑高木です。現在では世界中の料理や菓子に使われる身近なスパイスですが、かつては限られた島々だけで生産され、その交易を巡ってヨーロッパ諸国が激しく争ったほど価値の高い香辛料でした。私たちが「ナツメグ」と呼んでいるものは、実は果肉ではなく果実の中にある種子の仁を乾燥・加工したものです。さらに面白いのが、1つの果実から2種類のスパイスが採れること。果実が成熟すると黄色くなり、やがて自然に裂開します。その中から現れる黒褐色の種子を包んでいる、鮮やかな赤色の網目状の部分が「仮種皮」です。この仮種皮を乾燥させた香辛料が「メース(mace)」。そして、その内側にある種子から作られるのが「ナツメグ(nutmeg)」です。赤いメースが黒い種子を網目状に包み込む姿は非常に美しく、市販されている茶色い粉末のナツメグからは想像しにくいほど鮮やかな果実です。ナツメグは甘く温かみのある独特の芳香を持ち、ハンバーグなどの肉料理をはじめ、スープ、ソース、焼き菓子、飲み物など幅広く利用されています。一方のメースもナツメグと共通する芳香を持ちますが、より繊細な香りを持つ香辛料として料理や菓子などに利用されてきました。
原産地は、インドネシア東部に位置するモルッカ諸島、特にバンダ諸島です。現在では世界各地の熱帯地域で栽培されていますが、かつてナツメグの産地はこの小さな島々にほぼ限られていました。その希少性からヨーロッパでは非常に高価な香辛料となり、16~17世紀の香辛料貿易では極めて重要な商品となりました。そのため、ナツメグは単なる香辛料ではなく、植民地支配や世界規模の香辛料貿易の歴史とも深く関わってきた植物です。
樹は常緑で、自然下では10mを超える高木へ成長します。葉は細長い楕円形で、表面には美しい光沢があります。全体として端正な樹形になり、熱帯性の常緑樹として観賞価値もあります。小さな淡黄色~クリーム色の花を咲かせ、その後に丸みのある果実を形成します。果実が黄色く熟して裂け、中から真っ赤なメースに包まれた種子が現れる瞬間は、ナツメグを実際に育てるからこそ見ることのできる非常に面白い姿です。
栽培では、一年を通して暖かく湿度の高い環境を好みます。本来は熱帯性の樹木で、若木は特に乾燥や強すぎる直射日光を避け、明るい半日陰程度から育てるのがおすすめです。株が成長するにつれて徐々に光量を増やしていきます。用土は有機質に富み、適度な保水性を持ちながらも排水性の良いものが適しています。生育期には極端な水切れを避け、十分に水を与えます。寒さには弱いため、日本では基本的に鉢植えでの管理がおすすめです。気温が低下する時期には温室や明るい室内へ取り込み、霜や凍結は必ず避けます。
また、果実の収穫を目的とする場合に知っておきたいのが、ナツメグは基本的に雌雄異株であることです。雄花を咲かせる株と雌花を咲かせる株が分かれるため、実生苗では一株だけを育てても必ず結実するとは限りません。複数株を栽培することで、将来的に雄株と雌株が揃う可能性を高めることができます。なお、ナツメグは香辛料として通常使用される量を大きく超えて摂取すると、中毒を起こす可能性があります。自家栽培したものを利用する場合も、大量摂取は避けてください。
黄色く熟した果実が割れ、その中から現れる鮮烈な赤色のメース。さらにその内側には、世界的な香辛料となったナツメグの種子。1つの果実から2種類のスパイスが生まれ、その小さな種子を巡って世界規模の交易が行われてきた。料理に使う「ナツメグ」を、今度は植物そのものから育てて観察できる、食文化や香辛料の歴史が好きな方にもおすすめしたい非常に興味深い熱帯樹木です。
| 学名 |
| Myristica fragrans ニクズク科 ニクズク属 |
| 別名 |
| ニクズク |
| 花色・大きさ・花形 |
| 黄白色・極小輪咲き・釣鐘状の花 |
| 果実の大きさ |
| 4cm程度 |
| 結果年数 |
| 7年 |
| 自家結実性 |
| 一本でならない(雌雄異株) |
| 最終樹高 |
| 鉢植え:1m ~ 2m (常緑高木) |
| 栽培用途 |
| 鉢植え、観葉植物 |
| 植栽適地 |
| 沖縄(鉢植えであれば、全国での管理が可能です。) |
| 育てやすさ |
|
★☆☆☆☆ 難しい 日照条件:日なた~半日陰、 耐寒性弱い(10度)、耐暑性強い |
| 耐病害虫性 |
| 耐病性:普通 害虫:普通につく |



