園芸店の植物管理のうんちく。
レモン部顧問の高井尽です。
植物管理のうんちくをお届けします。

農業の学校を出ているわけではありませんが、
全国のお客さんからご注文や栽培のご相談に乗らせていただくことで、
それぞれの地域の気候や栽培環境にあわせた栽培の楽しさや、
栽培時にどんなことに悩んでおられるのか
実情がわかるようになりました。

普段から栽培に関するたくさんのご質問、
ご相談をメールやお電話でいただきます。
メールのご質問も多くなります。
対応に時間がかかったりする季節はお電話でおまたせしたり、
繋がりにくくなるかもしれません。

慌てずに慌てずに、落ち着いてください。
植物の成長はそんなに早くありません。
対処に1日遅れたところで、収穫や開花が1日遅れることはありません。
病気?
枯れた?
育たない?
元気がない?

剪定方法、肥料、などの、質問が寄せられます。
即答できるご質問もありますが、
あれ?どうだっけな?
調べてからお返事することもあります。

経験豊富な医者ですが、
中高年のため忘れっぽくなりました。
そりゃ、薬の名前や植物の名前、性質、
ブルーベリーだけで90品種以上ありますもん。
ぶどうだけでも数十種類います。

糖度や性質、剪定方法、
害虫や病気の名前や、
それに対応する薬の名前を全部、
即答できるほど天才ではありません!

ピンクレモネードとかいう名前のブルーベリーだっているんです。
レモンではないんですよ!?
八重桜とかいう名前の、牡丹がいたり。
玉牡丹という名の、梅ちゃんがいます。

ややこしいでしょ?
回答にも慎重になります。
詳しい栽培状況をお聞きしないと、
回答や対処法が変わりますので、
質問をいただいても答えられず、
逆に、質問をいくつもお返しすることも。

鉢植えですか?庭植えですか?
水やりは?
肥料はどれくらいの量を、いつ与えてますか?
などなど。
聞く間もなく、ついうっかり、

「うーん、ちょっとわかりませんので、」
といったりすると、
「詳しい人に変わってください!」などと怒られちゃったり。
「じゃぁ、もういいです!」などと言われちゃったりします。

私達も、お客さんの力になりたいですが、
物覚えが悪くてすみません。
苗木部はまるでお医者さんのようです。
お医者さんにかかるときのことを思い出してください。
緊急性が高い患者さんは先に返事を書きます。

「元気がないのですが、病気ですか?」
短い質問だと、診察しないとわかりません。
問診もしたいです。
見てみないとわからないことも多いです。

様々なことをお医者さんに尋ねられると思います。
どんなふうに元気がないのですか?
それはいつ頃からですか?
食欲は?
(水やりはどうしてますか?どれくらいの頻度でどれくらいの量を与えましたか?)

何を食べた?
(どんな肥料をいつ頃与えた?)
そもそも、鉢植え?
地植えですか?
日当たりはどうですか?
そもそも、
あなたはどこの地域のどちらさんですか?
質問をいただいたら、
必ずご注文履歴や過去の質問履歴を調べます。
(カルテのようなものです。)

ご注文者さんの名前がわかれば、どの地域の方かわかります。
ご注文履歴から住所をグーグルマップで調べて、
山の近くなのか、海沿いなのか、調べたりします。
また、お届け時期がわかれば、
いつ頃植え付けして、今は育ってなん年くらいか。
できるだけ、詳しく調べてからお返事します。

苗木部で買ったものでなければ、
地域や植えて何年か、鉢植えなのか、庭植えなのか、
などを教えていただければお返事しやすいです。
苗木部の苗でなくてもご質問にお答えします。
正確な診断やアドバイスを行うためには、

正確な情報ができるだけたくさん必要です。
情報が少ないと誤診したり、
問診や電話に長時間時間がかかり、
他の部員さんの質問への回答が遅れたりします。
育てる方を応援しますので、ご協力をお願いします。
6月だと一番病害虫被害が出る時期です。

まず、植物が成長するということは、
病害虫も成長するぞということです。
また、病害虫が原因ではないけれど、
いわゆる元気がないと言われる症状や相談の多い時期です。
花が終わり果実が膨らむ時期だからです。
気温が上がって来て、雨が多くなる時期だからです。
日照も減る時期です。

雨が多ければ病気も増えます。
日照が少なければ、間延びしたり、
光合成不足で葉色が悪くなります。
気温が高いと葉やけしたり、
人間だって熱中症も増えます。

葉が多く茂ると風通しが悪くなって、
病気や害虫もつきやすくなります。
湿気が多いとカビが出ます。
洗濯物も生乾きだと変な匂いになります。
そういうものです。

同じ環境で育ててる?
今までこんな事は起きなかった?
そりゃそうですが、たまたまそうだっただけ。
生き物ですから違いが出て当たり前。

私の息子も娘も、同じものを食べて、
同じ環境で育ててますが、
二人揃って病気にならないことも多いです。

病気の原因の多くはカビなどと同じような菌が原因です。
だから、病気用の農薬は「殺菌剤」が多いです。
苗木部には様々な栽培のご相談が寄せられております。
今日もこの時期のご質問をいくつかご紹介します。
雨が病気の原因です!

Q:瀬戸ジャイアンツが、やっと6月1日に発芽致しました。
皆様のご指示のおかげです。ありがとうございました。
今日久しぶりに、みんなを観察してみました。
1.瀬戸ジャイアンツが何か病気にかかっているようです。写真をご覧ください。
どんな消毒をすればよいでしょうか?

A:遅れておりましたが、芽吹き育ち始めたようですね。
ありがとうございます。
(ぶどうは4月に芽吹きますが、
まれに6月まで芽吹かずにじっとしているものもいます。)

写真を見る限り、おそらく「黒とう病」の症状だと思います。
ぶどうは雨が当たる環境ではカビや菌が原因の病気が出やすくなります。
今年は5月に雨が多かったので、黒とう病がよく出ているようで、他の部員さんからも相談が多いです。
こちらの薬剤を1週間おきに2~3度散布してください。
GFベンレート水和剤 (0.5g×10袋) 殺菌剤

雨除けして栽培すると病気予防になります。
とはいえ、屋根がない露地栽培でもブドウ栽培も可能です。
屋根をつけれない場合は、
雨が多くなる直前から殺菌剤を定期的に散布して予防してください。
(こちらのご質問はこちらの苗木部の部室に掲載しております。)

次の診断は、、、
病気ではないです!
Q:ピオーネとゴルビーの苗を購入したのですが葉に変化が出てきました。
病気かと心配です。
写真を添付しました。御助言のほどよろしくお願いいたします。

A: 葉脈が浮き出ている生理障害が原因です。
ウィルス病に似ていますが、病気ではありません。
生理障害は病気ではありません。
マグネシウム欠乏で起きる生理障害です。
同じような症状はブルーベリーやバラにも出ます。
原因は同じで、土中の微量要素である重金属類が欠乏して起きる生理障害です。
(こちらのご質問はこちらの苗木部の部室に掲載しております。)

Q:ブルーベリーのことで質問がございます。
突然(2~3週間前)、葉の様子がいつもと違う状態になってしまいました。
二本状態がおかしいのですが、
一本が緑色がとても薄く、徐々に黄色みもおびてきました。
もう一本も緑色がかなり薄くなってきました。

育てている場所は、半日影です。
鉢(苗木部さんで購入した黒いフェルト生地の物)から染み出る量の水を朝晩与えています。
他にも何本もブルーベリーがいるのですが、
同じ場所で育てているのに、この二本だけ異常事態です。

こうなる前にやったこととすれば、
去年苗木部さんで購入したブルーベリーの肥料を地表にまきました。
あと、この二本が他のブルーベリーに比べて花の量が多い気がします。
(というか他の品種がまだ咲いていないだけなのかもしれませんが)
写真を送ります。
どうかアドバイスをいただけないでしょうか。

A:これはクロロシスという現象です。
生育に必要な土中の微量要素のマグネシウムなどの重金属要素が欠乏して起きる生理現象です。病気ではありません。
ブルーベリーは弱酸制土を好みますが、
土壌酸度が中性~アルカリ性に傾くと土壌の重金属要素を吸収しにくくなります。
ピートモスを土壌に加えて土壌酸度を弱酸性に維持するようにしてください。
クロロシスになると光合成ができにくくなるので、
栄養不足になりやすく、株が衰えますので、花が咲きやすくなります。

写真では古い葉に見えるので、もし古い葉であれば取り除いても良いです。
新しいはにもクロロシスが始まっても何もしなくても回復することもありますが、心配であれば、葉面吸収ができる液体肥料などをシャワーしてあげると早く回復します。でも応急処置的。
マグネシウム肥料を与えるのも良いです。
(こちらのご質問はこちらの苗木部の部室に掲載しております。)

前提として、
多くの昆虫、動物は植物を餌として生存しています。
人間が育てる植物も昆虫たちにとっては餌です。
もし、農薬を使用しないで栽培すると
種無しシャインマスカットで100%、
桃で100%、りんごで97%。
被害の少ないナスでさえ21%の減収になると言われます。

整理整頓された庭先や
単一作物を広範囲な畑で栽培すること自体が、
自然界のように多種多様な植物と入り混じっている状態とは違います。
このような状態では病害虫が発生すると蔓延して被害が広がります。
自然界では植物を食べる昆虫。

それを食べるクモやカマキリや鳥などの天敵、
昆虫の死骸や鳥の糞、落ち葉を微生物が餌にして分解し、
それを養分にして育つ植物。
といった具合のサイクルが出きています。

クモは気持ち悪いと退治し、
鳥害、糞害を嫌がって追い払う、
落ち葉は掃き掃除して片付ける。
きれいな植物だけが整然と育っていますと、
病害虫にとっては庭先や畑は安全なレストランと化します。

植物は病害虫に侵されると、
自衛本能を働かせて自らが殺虫成分を作ったり、
棘を出したり、辛くなったり苦くなったりして
食べられないようにするらしいです。
(コロナに例えると抗体ができるという感じでしょうか)

でも、
より美しく、
より大きく、
より美味しく、
より早く、
棘がないように、
種がない品種を!

など品種改良された植物の多くは、
自衛本能の多くが失われて、
被害を受けやすくなっています。
(実際、とげなしはどれですか?って質問多し。)。
病害虫にとっては
庭先や畑はグルメな高級レストランと化します。

病害虫が発生しにくい環境を作ること。
適切に肥培管理して、
丈夫に育てることを目指した上で、
どうしようもないときは、農薬に頼りましょう。

農薬は国の厳しい基準に合格したものだけが認可されて使用許可が降りております。
コロナワクチン同様、
その使用方法を守って使用さえすれば、
国がその安全性にお墨付きを出しています。

ご近所、ご家族の理解が得れれば、
多少の病害虫は気にしないという対処法もあります。
病害虫に限らず、
生理障害や根腐れなどの生育障害を予防する一番の方法は、
こまめな観察です。
早期発見、早期治療によって、
最小限の作業や最小限の農薬散布ですむ場合もあります。

成長を見守るといいますが、
植物たちの成長もちゃんと見て、守ってあげてください。
まずは、見る、観る、診ることが大切です。

あと、気持ち良い接客には、
患者さんや、お客さんの協力が欠かせません。
お客さん、部員さんの力になりたい気持ちで、
正確にお答えするために、
一生懸命に考え、忘れてしまった内容は再度調べて確かめます。

こちらから質問したりするのは、
考えて、原因や復活させる可能性を探しているからなのです。
どうか、ご協力をお願いします。
元気になりました!
との、ご報告も同じくらいいただきます。
とても嬉しいです。

園芸って素晴らしいです。
最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました!
苗木部 部長 高井尽(たかいつくす)

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