
アグレプト処理(ストレプトマイシン)を1回、ジベレリン処理を2回、フルメット処理1回で無核化(種なし)します。
摘房
ぶどうは1本の新梢に2~4個花房ができますが、全部ならせると花ぶるいしやすく、果実の肥大も遅れ、来年の花芽も充実しなくなります。摘房して美味しいブドウを作りましょう。棚仕立てでは80cm未満の弱い枝は全摘房、1mくらいの枝では2本に1房、2mの強い枝には1房を目安に残し、他は摘房します。フェンス仕立てでは縦に伸ばすツル1本に1房。ならせなかった枝は翌年の着枝にします。
最終的な目安は1粒に対し、葉1枚です。1房30粒であれば、葉30枚に1房です。
最初から適正房数に摘房してしまわないように注意。最初から適正房数に摘房してしまうと、養分が新梢が伸びる方に回ってしまい、花が蕾のまま咲かずに落ちたり、咲いても受精しない花ぶるいを起こしてしまいます。樹勢が落ち着いた古木は多くの花穂を残さなくてもいいですが、樹勢が強いうちは房作りの前の最初の摘房は最終着房数の2倍を目安に残します。摘房の時期を遅らせて、新梢の伸びを抑えるようにします。残しすぎるとこの後のジベレリン処理や摘粒の手間が大変になるので、欲張りすぎにも注意です。
1本のシャインマスカットの苗木を裏庭に植えて、大きく育って300房収穫できます。

たくさん収穫するにはジベレリンや摘粒作業もその分多くなって手間が増えて大変になります。
もし、家族が食べるだけだから20房だけでいいや。という場合は、摘房で作業量を減らして手間を減らして楽しみましょう。
房作り
満開予定日の14日前~開花開始までに花穂の長さを3~4cmに房づくりします。
こんなに小さくして大丈夫?と心配するかもしれませんが、ジベレリン処理を行うと500〜600gの立派な果房に膨らみます。
以下の写真はナガヨシ農園のナガヨシさんからお借りしました。
房作り前 房作り後。3cmくらいにします。尻は切りません。
花につながる茎の葉も少し取り除いておくと、開花後にジベレリンをするのに楽になるのと、収穫時にいい感じになります。
アグレプト処理
満開予定日の14日前~開花開始までにアグレプトを200ppmで花穂に浸します。満開予定日の 14 日前は中庸な母枝の第2新梢で展葉 10~11 枚が目安です。シャインマスカットは種が入りやすいのでアグレプト処理は必須です。
ジベレリン処理1回目
満開~3日の間にジベレリン25ppmとフルメット5ppmを加えてジベレリン溶液を作り、花穂を溶液に浸します。食紅を混ぜることで、ジベレリン処理した果実とそうでない果実が見分けやすくなり作業が楽です。


未開花の蕾があると花穂が湾曲するのですべての蕾が咲ききってから行います。
1回目のジベ処理の4~5日後には花穂も倍以上の大きさになってきています。このときに内向き果を摘粒し、上部支梗を切り下げて花房を5~6cmくらいにそろえておきます。
ジベレリン処理2回目
ジベレリン2回目は1回目のジベ処理の10~15日後、ジベレリン25ppmで処理します。
2回目のジベ処理前後に仕上げ摘粒をします。花穂は7〜8cmくらいになってきます。もし伸びすぎている場合は花穂の長さ調整は上部支梗を切り下げて花穂を7〜8cmに調整します。35~38粒くらいになるよう摘粒するのがおすすめ。上部支梗は左右揃うようにし、内向きや下向き粒は摘粒。小果梗が太くしっかりした果粒を残してください。
なり始めて3年未満の若木は果粒肥大が劣るので、少し多めに果粒を残しておくと、粒が密集した房になります。


粒を残しすぎると大房になる反面、果房内での糖度の差が大きくなり、糖度も上昇しなくなってしまいます。おいしくて、立派な粒にするには欲張って粒を多く残しすぎないことです。
果皮が薄いので雨や湿度で裂果しやすいので、雨よけ栽培と袋がけがおすすめ。
摘粒が終われば袋がけです。
白の袋でもいいですが緑色や青の袋を使うほうが果皮の黄化を防ぎ綺麗に仕上がります。

シャインマスカットのジベレリン処理のまとめ
- 花が咲く1ヶ月前(4月中旬)から準備開始:必要な道具・薬剤を揃える
- 満開の2週間前(4月末〜5月初旬)から作業開始:摘房、アグレプト処理
- 満開〜開花後3日:房作り、ジベレリン1回目、予備摘粒
- 1回目ジベ処理の10~15日後:2回目ジベ処理、仕上げ摘粒
- 数日後:実の太り方を眺めてニヤニヤ、房数近くまで摘房
- 袋掛け
- 準備不足だと作業ができず結果、種ありになる
- 必要な薬剤は早めに注文しないとお届けが遅れた結果、種ありになる
- 5月末頃までが一番忙しい
- 園芸店の忙しい時期と重なるので作業が遅れた結果、種ありになる
シャインマスカットの種無し処理に必要なもの
- ジベレリン
- フルメット
- アグレプト
- ぶどう鋏(粒を傷つけないよう先が細い)
- 手間
- 欲張らない心
あとがき
苗木部で梱包リーダーのノブオさんは私の叔父です。
信夫さんはミカン農家でぶどうは素人でした。
シャインマスカットの1年生接ぎ木苗を何年か前に1本裏庭に植えて、3年後には30房以上取れました。
その時のノブオさんです。

お盆に孫たちにふるまってからシャインマスカットにハマってしまいました。
翌年から80房、180房と収穫量も増え、とうとう収穫したブドウを販売し始めました。
その2年前はぶどうの木が病気してしまい、ノブオさんはものすごく落ち込みました。それでも諦めずに頑張って60房くらいしか取れませんでした。
翌年は260房で、2020年の今年は1本の苗で300房収穫しています。
2年前から柿畑を一部やめて、シャインマスカットを3本増やし、クイーンニーナも1本追加しました。
ブドウ栽培は手間がかかります。収穫したときはニヤニヤが止まりません。家族や親戚、職場のみんな、周囲からの尊敬の眼差しもあります。
最初はうまく行かないこともあります。うまく行っていたのに失敗することもあります。ブドウは何年も生きる木です。今年ダメでも来年また収穫のチャンスがやってきます。試行錯誤するうちにぶどう栽培も上達します。
大好きなシャインマスカット、1本からまずは植えてみませんか?

ぶどう栽培の相談が多いので、会社にも植えました。
均等に結果枝を出させて、いい感じに収穫を目指します。
栽培や剪定のご相談にご来店いただいても対応します。